樹齢150年の庭木を生かす家具作り

 小さい頃から、家の庭に当たり前にそびえ立つ木。木に手を当てて、目を閉じると、あの日の風景や笑い声が浮かんでくる。そんな庭木を大切に思う熊谷崇さんのお話です。自宅の建て替えで、伐採しなければならない木がありました。伐採した木が次の物語を始めようとしています。

 熊谷さんは、塩尻を拠点に中南信で活躍する若手造園家。普段の施工から「そこにあるもの」をいかに活かしていくか、を大切に考えてきた熊谷さんだからこそ、伐採した木に次の命を吹き込みたいと考えたのです。

 

樹齢 約150年の庭木で手作り家具を

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 ご自宅を建て替えを検討している熊谷さんは、庭にある大きな高野槙(こうやまき)をどうしようか悩んでいました。樹齢は約150年、高さは約8m。太く大きなその高野槙は、家の建て替えの建設予定地に差し掛かってしまう。建て替えと同時に高野槙を切ってしまうか。でも、子供の頃からずっと家族を見守ってきてくれた木。思い出がいっぱい詰まった木を切ってしまうことには少し抵抗がありました。

「この木を活かす方法はないものか…」そんな風に考えている中で、熊谷さんは思いつきました。
「新しい家で使うようの木材として使おう」と。「150年以上この地で生きてきた木が、形を変えてまた自分たちの暮らしに息づいてくれれば、そんな嬉しいことはありませんから」と熊谷さんは笑う。


高野槙の伐採。製材所へ


 「小さい頃、トイレから見えるこの木が怖かったんだよね」と熊谷さん。大きな立派な木も、幼い熊谷さんにとっては怖い存在だったといいます。そんな生い茂った高野槙の伐採は、まず枝を切り落とすところから。その後クレーンで引き上げるという大掛かり。無事伐採は完了しました。

後日、熊谷さんの高野槙は伊那市の唐澤木材工業にありました。木は切断してみないと、中の状態はわかりません。虫が入り腐ってしまい、家具にするのが難しい場合もあります。

いよいよ、切断です。木目が綺麗に出るように計算しながら、厚さや角度を決めていきます。大きな音とともにカッターが動き出しました。人より大きなカッターに高野槙がどんどん吸い込まれていきます。緊張の一瞬です。


切断面を見ると、綺麗な木目が出ていました。とても良い状態とのことでした。その後もどんどん切断していきます。

切断された高野槙は、しばらく乾燥させ、家具になるのを待ちます。


さて、どんな家具にしようか

伐採した高野槙をどのような家具にするか、熊谷さんは悩み中です。「家族で使えるような家具にできたら良いな」と夢は膨らみます。

思い出のつまった木が形を変え、家具として使われていく。どのような家具に変身するのか、私たちも楽しみです。

 

文・新井明日香