学校の木を伐って生み出した、経木のランプ。~上農高校で行った商品開発授業について~

上伊那農業高校里山コース3年生と一緒に、約4か月間にわたって経木のランプづくり授業をさせていただきました。

ことの発端は、1年前に開催した全国削ろう会信州伊那大会

この大会を通して、「木を削る」という職人の叡智が詰まった手仕事の技や、木の最大限に活かす職人の技術に触れた上農高校里山コースの先生が、木を活かす職人の技術を教えて欲しい、授業をしてくれないか?と、とお話いただいたのがきっかけです。

上農高校里山コースは、里山の資源を活かす学びを行っています。(森のことを学んだり、森の利用方法を学んだりetc...)

しかし、担当教諭である新井先生はある悩みを抱えていました。

新井先生:「毎年、上農祭で販売できるものが少なくて困っています。他のコースでは、ジャムやケチャップ、野菜や果物などを販売しているのですが、里山コースは”炭”などしか、販売できるものがありません。どうにかして、地域の森林資源を使って木の付加価値付けを学ぶ授業をやってもらえないでしょうか。そして、ゆくゆくは、上農祭で販売できたら…と考えています。」

昨年は、鉋の削り華を使ってコサージュを作り、卒業生にプレゼントをする授業をやらせていただきました。

そして、今年はもっと木を暮らしに活かした取り組みにチャレンジしたいということで、やまとわにご相談いただきました。

私たちは、昨年から「経木」の生産・販売を行っていました。

経木とは、アカマツを薄く削ってつくる、日本伝統の包装材です。

先生との話し合いを進めていく中で、”学校のアカマツを伐って経木に加工し、暮らしを彩るランプをつくったらどうだろうか”という話になり、この授業がはじまりました。


「 木の命をいただくところから。商品開発の授業プログラム 」

今回の授業のざっくりとしたプログラムは、下記の通りです。
商品を生み出すにあたって必要な工程を、授業プログラムに落とし込んでいきました。

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① 情報発信・木の付加価値づけについて学ぶ

② アカマツの伐採

③経木に加工をする

④ ターゲットと利用シーンを具体的に考え、決める        

⑤ ランプのデザイン(案)を考える→色んな人にヒアリング

⑥ デザインの課題を見つけるために、プロトタイプを作ってみる

⑦前回の授業で出た課題や新たなアイディアを元に、プロトタイプづくり

⑧展示用のランプをつくる

⑨大芝公園で開催されているテイクアウトマーケットにて、経木ランプの展示会を開催

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また、この学びを進めていくに当たって、上農里山コースのinstagramアカウントを作成。

生徒たち自ら、情報発信をしてもらいました。

授業を進めていく中で、特に印象に残っていることが3つあります。

高校生のアイディアの豊さと②授業後半の追い上げ、③展示会での生き生きとした表情です。

これから、その3つを軸に、約4か月に渡って行ってきたこの授業を振り返りたいと思います。


「どんどん出てくる、ランプのデザイン」

まずはじめに、これから作る経木ランプの”ターゲット(性別・年齢・職業等)”と”その人の暮らしぶり”を、グループワークを通して決めました。

それを元に、ランプの利用シーンなどを想定しながら、デザインの書き起こしを行いました。

鉛筆を使って、思い思いにランプの形をデッサンしていく生徒や、実際に経木を触りながら形を作っていく生徒たち。

各々のやりやすい方法で、デザインを生み出していきます。

私たちは当初、限られた時間内だと、ユニークなデザインは出てこないんじゃないか?と考えていました。(授業が始まる前にデザインを考えてみたのですが、単純なデザインしか思い浮かばなかったからです…。)

しかし、授業を進めていくと、私たちの不安は払拭されました。

どのグループも、個性豊かで素敵なデザインを次から次へと考えだしてくれていたのです。

恥ずかしながら、完全に、生徒たちを見くびっていました・・・。

この授業を通して、生徒たちの発想力の豊かさに心から感動しました。

 

考えたデザインは、伊那弥生ヶ丘高校・美術部の生徒さんたちにオンラインでヒアリング。

自分たちのデザインを、カメラに向かって堂々とプレゼンしている様子に、何だかほっこりしました。

生徒たちは、「めっちゃいい意見もらえたー!」と、満足げでした。



「 山あり谷ありの授業。 」

生徒たちは、モノづくりのプロではありません。

しかも、経木は裂けやすく繊細な素材です。

頭の中では”上手くいくはず!”と考えたデザインを、いざ実際に経木で作ろうとなると、中々上手くいきません。

慣れない細やかな作業に、四苦八苦する日々。

経木が裂けたり、汚れてしまったり。

一筋縄ではいきませんでした。

どうなるんだろ、ちゃんと素敵なランプを作って、ゴールできるのだろうか・・・。

授業の後半に入ると、私たちも学校の先生たちも、不安の色が見え始めました。

授業の度に、プロトタイプを作っては改善し、作っては改善し、を繰り返す日々・・・。


しかし、生徒たちは決してあきらめませんでした。


一生懸命、ひたむきに、よりクオリティーの高い経木ランプを作ろうと、試行錯誤を繰り返してくれました。

この授業に同行していた木工職人に「どうしたらもっと上手に経木のランプをつくることができますか?」と、自分が抱えている課題を分析し、アドバイスをもらう姿もしばし見けられました。

時には、進歩状況をクラスで共有して、助言をし合ったり。

その結果、段々とランプのクオリティーが上がってきました。

「どうやったら、効率よく、そして精度の高いランプシェードが作れるのだろうか・・・。」

生徒1人1人が考えてくれたので、今までとは比べ物にならないくらい作業が丁寧になり、作業工程1つとっても、各々の工夫がみられるようになりました。

そして、最後には、今までとは格段に精度の高いランプをつくることが出来ました。



「自信満々な表情で、お客さんに作品の紹介をする高校生」

11月2日、大芝公園・味工房で開催されているテイクアウトマーケットにて、経木ランプの展示会をさせてもらえることになりました。

ターゲットを決めて、利用シーンなども考えて作った経木ランプ。

今までは、こんな人たちにこんな風に使ってもらえたらいいな・・・とざっくり仮定して、作ってきましたが、この展示会を通して一般のお客さんたちにリアルな感想をいただくことができます。

生徒たちが一生懸命作ったランプが、どんな風に評価されるのか、ドキドキ、ワクワクしていました。

そして、いざ、蓋を開けてみると、なんと大好評!!!

最初は、緊張した面持ちだった生徒たちも、徐々に自信を付けたのか、自分たちが作ったランプのこだわりポイントなどを、一生懸命お客さんにプレゼンしています。

その様子を見ていて、たった10回程度の授業でしか関りが無かったのですが、生徒たちがとても逞しく見えて、心から嬉しくなりました。

授業が終わり、生徒たちから授業の感想をいただきました。

とっても嬉しかったので、一部を抜粋してご紹介したいと思います。

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◎感想文紹介◎

・1本の丸太から商品を開発するまでの難しさや大変さを身を持って知ることができた。伐倒から行って学校の木を使って最初から作ったので、思い出に残る授業だった

試行錯誤しながらつくっていくのは、大変だったけどやりがいがあって楽しかった

木は、作り方(使い方)によって何倍もの価値になるということがすごいと思ったし、とても勉強になった。

・地域のモノを材料として使い、地域のものだけでつくったこの授業は、とてもいい思い出になった。今回の体験を通して学んだことを生かし、地域に貢献できる人に成長していきたいと思った。

・地域の方と一緒に、経木でランプを作るという授業に最初はどうなるかと心配をしていたが、伐倒や木の削り方など色んな事を教わっていくうちに、段々と自信につながり、最後までやり遂げることができた

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山あり谷あり、本当にちゃんと着地することができるのか、不安でいっぱいになったりもしましたが、上農高校里山コースの生徒たちと一緒にやらせてもらったこの授業は、とっても楽しかったです。

この授業を通して、少しでも、「私たちの工夫次第で、地域の木や森を面白くすることが出来る、暮らしに取り入れることができるんだ!」と、生徒たちに実感してもらえたなら、とても嬉しいです。

 

\  News!!!  /

 伊那市役所のエントランスにて、経木ランプの展示をしています! 

ここで、1点ご案内をさせてください。
生徒たちが作った経木ランプが、現在、伊那市役所のエントランスに飾っていただいています。

期間は、12月24日までとなっています。

男子高校生たちだけで作ったとは思えない、精巧で温かい経木のランプを、ぜひ一度見ていただけたら嬉しいです。

▼上農生がつくった経木のランプ、伊那市役所にて展示中です!|株式会社やまとわ

https://ssl.yamatowa.co.jp/news/2960